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映画「運び屋」

.12 2019 映画 comment(0) trackback(0)
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レンタルDVDで「散り椿」と一緒にもう1本洋画を借りた。
この3月に上映になり人気を博した作品である。
監督・主演 クリントイースト・ウッド88歳の作品である。
こう云うと叱られるかもしれないが、あるいは最後の作品
になるのではないかと思う。

物語の主人公アールは、家族よりも仕事を優先する老人。
娘の結婚式にも出席せず、以来娘からは一切口を聞いて
もらえない。妻も家を出て、彼は農園で使用人とデイリリー
という花を栽培して暮らす。社交的な彼は花の品評会には
お洒落をして愛嬌を振りまき、人々の称賛を浴びてきた。
ところが、時代の趨勢でインターネット通販に押され、農園
の経営は行き詰まり、家も農園も差し押さえられてしまう。

彼はおんぼろ家財をぼろトラックに積み込んで仕方なく
孫娘のパーティーを訪ねる。だがそこに待っていたのは
妻や娘たちの冷たい視線。いたたまれない彼に一人の
男が近づき、「大変だな。この歳で。いい仕事がある。
なーに楽な仕事だ。気が向いたらここを訪ねな。」と1枚の
名刺を渡す。頼るところもない彼は結局ぼろトラックに乗り
名刺の場所を訪ねる。仕事は簡単だった。指定された街の
ホテルまで荷の入ったバッグを届けるだけだ。花を売ったり
苗を手に入れたり、様々な街を渡り歩いた彼にとって
道路わきのレストランや知り合い、脇道、すべてが慣れた
世界だった。音楽をかけ、歌を口ずさみながら、楽し気に
この運び屋の仕事をこなす。だが代金を受け取ってその
金額の大きさに驚き、運ぶものがなんであったか彼は
察していく。若いギャングの手下に連絡用のスマホを渡され
ても、メールの打ち方が分からない。しかし意外にも運び屋
としての能力が認められ、運ぶ荷物の量が増え、市場価格
で数億円分の麻薬を運ぶ大物の運び屋に育っていく。

アールはそこで得たお金で、孫娘の学費援助や昔からの
友人、仲間へ資金援助をし、やがて自分の家と農園を
買い戻す。皮肉にも犯罪に手を染めながら、そこで得られる
お金で社会的自立を果たすことで、彼は元気を取り戻していく。
やがて自分が一度失った家族の愛情や信頼の大きさに
気づいた彼はなんとかそれを取り戻そうと努力するが、それは
難しい。

この映画では運び屋の実態を麻薬撲滅を掲げて犯罪捜査を
繰り広げる警察、この年老いた運び屋を意外にも評価する
麻薬組織のボスという二つの視点でディテールを見せながらも
犯罪映画が持つ暗さがない。それどころか一人の老人の
社会復帰、社会参加的視点で描いてあり、皮肉にも主人公
アールが仕事も家族も失ったのちに再びそれらを取り戻す
物語へと微妙にスライドしていく。

それはまるで「人生をやり直すのに遅すぎることはない」と
云っているようである。

クリント・イーストウッド、御年88歳。若いころの彼はダーティー・
ハリーを見ればわかるように眼光鋭く、怖いほどの光を
まとったスーパースターで新しい形のアメリカンヒーローだった。
歳を経るにつれ、顔から厳しさが取れ自然な顔に戻っていく。
だが、作品は1作1作が独自でユニークなテーマを取り上げた
社会性を持った映画へと変わっていく。映画人としての評価も
高く、1作ごとに更に評価を高めていく。どういうことだろう。
彼の中では歳をとったから終わるのではなく、年相応に新たな
物語を見つけられるだろうというのが彼の信条なのではあるまいか。
映画の中で周囲の人に言わせるセリフがある。「ジェームス・
スチュワートに似てるね」と。誠実さとアメリカの良心と慕われた
名優のように彼は演じたかったのだろうと思われる。

おっと、最後はどうなるか?少しだけお話ししましょう。
麻薬組織はボスが手下に殺され、組織経営がいささか合理的に
なる。マイペースの運び屋アールはすぐに目を付けられ、見張りを
つけられる。一方の警察側は内部情報を手に入れ、ホテルに監視
を置いて待ち構える。絶体絶命の中、1本の電話がかかる。孫娘
からだ、「おじいちゃん、おばあちゃんが病気でもう長くないの。
すぐに帰ってきて」うろたえながら「今、どうしても手が離せない。
すまない」・・・・・・・
ギャングの見張り、警察の監視網から突然、運び屋の車が消える。
アールは、家に帰り、妻の傍らに寄り添い。最期を看取る。葬式には
たくさんの花を飾り、家族との仲も少し打ち解けてきて、そして、
彼は最後の運び屋の仕事に戻っていく。結局、逮捕、裁判、刑務所
暮らしの様子が淡々と描かれながらエンドロールが流れる。

最後に流れるのはカントリーアンドウエスタンの曲、アールを追う
警察官役がブラッドリー・クーパー。「アリー スター誕生」で
歌っていた声に似てると調べたら、シンガー・ソングライターの
トビー・キースという人で、この作品のオリジナル楽曲
「Don't Let the Old Man In」を提供していた。これ歌のタイトルを
ユーチューブで検索するとすぐに出てきます。一度聴いてみてください。
エンドロールに流れる日本語訳がよかったのでここにあげておきます。


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Don't Let the Old Man In   

老いを迎え入れるな
もう少し生きたいから
老いに身をゆだねるな
ドアをノックされても

ずっと分かっていた
いつか終わりが来ると
立ち上がって外に出よう
老いを迎え入れるな

数え切れぬ歳月を生きて
疲れきって衰えたこの体
年齢などどうでもいい
生まれた日を知らないのなら

妻に愛をささげよう
友人たちのそばにいよう
日暮れにはワインで乾杯しよう
老いを迎え入れるな

数え切れぬ歳月を生きて
疲れきって衰えたこの体
年齢などどうでもいい
生まれた日を知らないのなら

老いが馬でやってきて
冷たい風を感じたなら
窓から見て微笑みかけよう
老いを迎え入れるな

窓から見て微笑みかけよう
まだ老いを迎え入れるな




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