5月の読書会

.16 2017 読書 comment(0) trackback(0)
昨年、読書会では初めて1冊の本を指定するという方法をやってみたのですが
会員の中では好評で、今年もぜひやろうということになりました。
昨年はジョージ・オーウェルの「1984年」
これは重たかったが、ある意味こんな機会でもない限り読まないだろうということで
概ね賛同を得ました。
実はアメリカでは大統領選のあとこの本がよく読まれるようになったとか。

で、今年は? 昨年、あまりヒットはしませんでしたがちょっと話題になった
スコセッシ監督の映画「沈黙」がちょっと引っかかったので、
原作、遠藤周作の「沈黙」を今回のテーマにしたのです。
うーん、しかしこれも予想通り重たかった。思えば学生時代から読まねば読まねばと
思っていながら、なんか重そうだなと敬遠した作品でした。

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時代背景は江戸時代初期、キリスト教が禁教になって関係者は国外追放に
なった後のこと。それでも日本に隠れる信者たちのために残ったフェレイラ教父が
拷問の末、棄教したという情報がポルトガルのイエズス会本部に入る。
事の真相を究明するためと残された信者のために二人の若い神父
ロドリゴとガルペが九州のある田舎に潜入します。

二人は最終的には捉えられます。ガルペは処刑される農民を助けようと
溺れて死にます。ロドリゴは覚悟を決めて自分がどんな拷問に遭おうと
耐えて信仰を守ってみせると固く誓います。
そこへ今では日本人名をもらい妻帯までしているかのフェレイラ教父が
ロドリゴの前に現れ、棄教を勧めるのです。

フェレイラはロドリゴに言います。「日本人が信じていたのはキリスト教の神
ではない。日本人は今日まで神の概念は持たなかったし、これからも
もてないだろう。」

ロドリゴは結局、拷問されなかった。だが、一緒に捉えられた農民が踏み絵
を踏んだにもかかわらず、拷問に遭う。そのうめき声がロドリゴを苦しめる。
ロドリゴは祈る。「神よ、なぜ沈黙されているのですか」
この後、ロドリゴは踏み絵の前に引き立てられる。「踏めば、拷問を中止して
農民を助けてやろう」
フェレイラが耳元で囁く、「踏まずに信仰を守るという行為は、農民を見捨て
自分の救いが大切だからだろう」さらに「キリストは転んだだろう。愛のために。
自分の全てを犠牲にしても」

ロドリゴは最終的に踏み絵を踏む。その時、踏むがいいと踏み絵のあの人は
ロドリゴに向かって言った。踏むがいい。お前の足の痛さをこの私が一番よく
知っている。踏むがいい。私はお前たちに踏まれるため、この世に生まれ、
お前たちの痛さを分かつため十字架を背負ったのだ。

その後ロドリゴはフェレイラ同様、日本人名をもらい処刑になった者の妻をもらい
監視の下、日本人として生きながらえる。

このもっとも考えさせられる場面で昨年の1984年を思い出した。
こちらは権力に屈して最終的に権力者のいいなりに白いものを黒いと
言わされる。恐怖によって転向させられるわけだが、今回の沈黙では
キリスト教の信仰と隣人愛との板挟みに苦悩する神父の姿が痛ましい。
自分への拷問であれば耐えられたものを、愛の宗教と言われるキリスト教の
隣人への愛が転ぶ(転向)ことにつながるというなんとも皮肉な結果に終わる。

この時期、世界の動きはカトリック(旧教)からプロテスタント(新教)へ移行する
時期に当たる。宣教師を送り込んで住民を懐柔し、後に武力で制圧する手法は
曲がり角を迎える。ポルトガル、スペイン、イタリアなどの勢力が衰え、
イギリス、オランダなどが宗教と貿易を切り離した形で世界を席巻していく。

世界の辺境の地で即断即決できないカトリック国は次第に力を落としていき、
個人の国家や組織への忠誠心を前提としたプロテスタント国が勢いを
増していくのである。

作者の遠藤周作氏は幼児洗礼受けたクリスチャンである。ただ長いあいだ
信仰の日本人として違和感を覚える。そのためフランスに留学してまで
信仰を深く学ぶのだがその違和感は消えない。そうした作者自身の
悩みも見え隠れする。

1991年アメリカ旅行中にスコセッシと「沈黙」の映画化について話し合われている。
実現までに随分年月が経ち、遠藤周作自身も過去の人となった。この時期になぜ?
「沈黙」なのか? 日本人に見せたかったのか? あるいは欧米人に見せたかったのか?
映画は残念ながら、気づいたときにはもう終了していた。ぜひ見てみたいと思う。

重たい作品だったが心に残る作品である。




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