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神々の遊ぶ庭

.31 2018 読書 comment(0) trackback(0)
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宮下奈都さんのエッセイというので読んだら面白かった。

宮下奈都さんの家族5人が一家まるごと北海道の
山中に1年間移住した話を日記風にまとめたものだが、
実際にはその山中に暮らしていた間、ある雑誌に連載
されていたものをまとめたものだ。

暮らした先は北海道の中央部、大雪山国立公園にある
トムラウシ。アイヌ語でカムイミンタラ。「神々の遊ぶ庭」
と呼ばれる美しい山だ。余計な情報かもしれないが、
数年前の夏、多くの登山者が低体温症で亡くなるという
遭難事故があった場所だ。
遊びに行くのではない。そこで1年間、家族で暮らすのである。

宮下家は東京生まれ東京育ちで北海道に憧れを抱いている
宮下夫、福井生まれ福井育ちの宮下妻(作家)、中3の長男、
中1の次男、小4の長女。小中学校の併置校で、其の時点で
小中合わせて10人の生徒。大変な僻地校である。そこへ
山村留学するのである。

一体何ゆえにそういう事態になったのか。作者はそこら辺を
夫に気遣いながら楽しげに書いているが、実際はどうだったか。
都会育ちのくせにやたら北海道好きの宮下夫が言いだしっぺである。
家族会議でどうせ子供たちが反対するさとタカをくくっていた宮下妻。
ところが子供たちが俄然興味を持った。腹をくくった宮下妻は
この1年を楽しむことにした。その心意気が文章に現れている。

家族がいつも一緒にいる生活。学校がすぐそばで村人すべてが
学校行事に関わりあう生活。先生も村人も皆が子供たちに
真剣に向き合う。実は神様がくれた宮下家への宝物になる1年だったのだ。

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この本を読んでいて、何か似てる。そう思った。
実は我家の椎葉での生活がよく似ているのに気づいた。
私は小学校の5年生まで串間市の福島小学校に通っていた。
父は中学校の教頭をしていたが、その春の人事で父は
突然、椎葉村小崎小学校の校長として赴任することになった。
先に一度現地に様子を見に行った父の話から想像するに
大変な山奥であることがわかった。不安があったが家族5人で
赴任することが決まった。

日向市からバスに揺られて4時間。途中諸塚でトイレ休憩があった。
上椎葉に着くとそこからタクシーに乗り、椎葉ダムのダム湖に沿って
30分。ダム湖が終わる場所。そこに小崎小学校が有り、
グランドの上に教職員の住宅が数軒並んでいた。
周囲には民家が10軒程度あるだけで、学校の子供たちは
川沿いの山々から歩いて学校へ通ってきた。

その春から私が小学校の6年生。妹が4年生。弟が1年生だった。
家族はその地に父の任期の3年間を過ごしたが、
私は中学校から宮崎市にある私立の日向学院中学校へ進学した。
私にとっては1年間の山村留学みたいなものだった。

不思議なのはいまだに私たち家族にとって多分、一番いい時を
過ごしたという感覚を共有していることだ。
椎葉村小崎という場所はその時から我が家にとって
「神々の遊ぶ庭」で有り続けているのだきっと。

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もうひとつある。大阪の会社に勤めていた頃、40代後半ではなかったかと
思うが、会社の先輩に誘われて岐阜県郡上市明宝気良にある別荘に
渓流釣に通うようになった。年に3回、春、夏、秋と2泊3日で通った。
ここも私たちにとっては「神々の遊ぶ庭」だったのではないかと
思っている。

こういう好機はそうあるものではない。
私が子供であった両親を含めた家族はこうしていい機会に巡り会えたが
私を父とする娘たちとの4人家族はこういう機会に巡り会えなかった
気がする。

定年退職をして大阪から串間に帰って、翌年、郡上へ誘ってくれた
先輩が亡くなった。その数週間後に私の妻が亡くなった。
大切なものを失ったその年の秋、車で人吉から妹夫婦と落ち合い、
九州山地を越えて、椎葉へ向かった。

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私は再び、「神々の遊ぶ庭」を得たかったのかもしれない。
翌年から春、秋と2泊3日で椎葉村小崎の川の口集落に通い始めた。

話を宮下家に戻そう。
宮下妻はこの本「神さまたちの遊ぶ庭」を如何にも楽しげに
一見ノー天気に見える明るさで楽しい日々を綴っている。
ところがである。
実際には彼女はしたたかにもその間、小説を書いていたのである。
その小説があの「羊と鋼の森」だったのだ。
あるいはと思ってみる。
この本は神々が書かせたのかもしれないと・・・・・・





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